韓国の李在明政権が、ウクライナのゼレンスキー大統領に怒りを爆発させている。
 発端となったのは、ロシアに派兵されて昨年1月にウクライナ軍の捕虜となった北朝鮮兵2人の扱いだ。韓国行きを希望していた2人は両国の交渉を経て、今年9月に移送された。

 ゼレンスキー大統領は9月23日の国連総会演説でこの事実を公表したのだが、韓国側は本人や北朝鮮に残る家族の安全にかかわるため、非公開で合意していたとして猛抗議。ウクライナ側は合意の存在を否定した。

 韓国が謝罪を要求すると、10月6日には韓国外相が、謝罪を含むメッセージを受け取ったと明かしたものの、求める水準には達していないと説明。8日には駐ウクライナ大使の本国召還を決めた。
 一方、ウクライナのシビハ外相は10月12日、すでに解決した問題だとの認識を示している。

批判をかわすためにどうしても譲れないラインがある
 なぜ韓国はここまで強硬な姿勢をとるのか。韓国政治に詳しいジャーナリストは、
「李政権には、怒りを収めると自分たちへの追及が強まる、という国内事情があります」
 と言うのだが、いったいどういうことか。
「韓国における北朝鮮捕虜の受け入れについて、自国の政府ではなく外国の大統領から知らされたことで、保守系野党『国民の力』は『なぜ国民に隠していたのか』と批判を強めています。北朝鮮との関係改善を目指す李政権だけに、金正恩氏の顔色をうかがって公表を避けたのではないか、と突かれてしまったのです」

 こうしてウクライナに怒り続けざるをえない状況に陥ったのだが、
「李政権としては、北朝鮮への忖度で隠したのではなく、捕虜の命を守るための約束をウクライナに破られた、という説明をなんとしても通したいところ。ウクライナに事前の約束を認めさせた上で、正式に謝罪させることができなければ、公表したゼレンスキー大統領に問題があったと国内向けに示せない。どうしても譲れないラインがあるんです」(前出・ジャーナリスト)
 激怒の背景には、難しい国内事情があったのだ。

(川瀬大輔)
1977年生まれ。国内外のビジネス、スポーツ、政治、社会問題を取材するフリー記者。

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