旅行などで他県へ行き、「どこから来たの?」と尋ねられたら、「○○県から」と県名で答える人は多いでしょう。しかし、県内の都市の知名度が高い場合などには、都市名で答えるケースも少なくありません。日本で32年ぶりに開かれるアジア大会の開催地として注目を集める愛知県では、名古屋市の出身や在住でない県民までもが「名古屋から」と答えるといいます。読売新聞が運営するユーザー投稿サイト「発言小町」には、「どこから来たのか尋ねられて『名古屋』と答えたが、都道府県名を答えた方がよかったのか」と迷う名古屋市民からの投稿が寄せられました。なぜ、愛知県民は「愛知県」ではなく「名古屋」と答えるのか、 地域研究や地理学を専門とする名古屋学院大学現代社会学部教授の江口忍さんに聞きました。

投稿したトピ主は、名古屋市在住の「スイカ」さんです。島根県を旅行した時、とあるイベント会場で「どこから来たのか」を尋ねられ、トピ主さんは「名古屋から来ました」と答えました。ところが、同じ質問をされた周りの人たちはみな、都道府県名で答えていました。

普段、名古屋市内で「どこから来たのか」と聞かれたら、市の行政区の名称を答え、他県で聞かれたら「名古屋」と答えているというトピ主さん。「愛知県と答えるより名古屋と答えた方が(他県の人には)分かりやすいと思いますが、他の方と同じように、都道府県名で『愛知県』と答えた方がいいのでしょうか」と発言小町に問いかけました。

このトピには、100件以上のレス(反響)がありました。

「『名古屋』が正解」と、トピ主さんに同調したのは「吉良吉田行き準急」さんです。「愛知県で生まれ育ちました。名古屋市ではありません。仙台の大学に進学しました。『どこから来たの?』と聞かれて『愛知県です』と答えたら、『それは大変ですね、随分遠くの四国から』と言われ、愛媛県と間違われたことに気付くのに、しばらく(時間が)かかりました」と自身の体験を語ります。

「つばき」さんも、「みんな、住んでいるところからの分かりやすさで、言い方が変わっちゃうんだと思います。ということで、『名古屋』でOKです。むしろ『愛知です』と答えたら、『名古屋以外なんだな』くらいに思っちゃいますよ」とつづります。

さらに、愛知県民は名古屋市民でなくても「名古屋」と名乗るという情報も寄せられました。名古屋市の隣の市に住んでいる「がーこ」さんは、「旅行先でツアーの人と、どこから参加したかを話していたら、『名古屋』と言った全員が名古屋市民ではありませんでした」と打ち明けます。

「るんるんちゃん」さんも、「東海市でも春日井市でも愛知県の人は『名古屋から来ました』と答えます。車のトヨタならだれでも知っていますが、豊田市の人でも『名古屋から来ました』って言いますよ」とコメントしたうえ、「岐阜っ子や三重っ子も『名古屋です』って言っています」と、隣県の人までも「名古屋」と名乗っていることを暴露しました。

「私なんか名古屋市内どころか隣県在住だけど、遠方へ行ったら『名古屋から来ました』『名古屋へ帰ります』と言いますよ」と白状したのは、「あかつき」さん。「名駅(名古屋駅)を通過して来ているからうそじゃないし、そのほうが伝わるから」と罪悪感はない様子です。

このように発言小町のレスは、「名古屋」と答えているという人や、「名古屋」と答えることに賛成する人のコメントで埋め尽くされました。

名古屋学院大学教授の江口さんは、愛知県民が「どこから来たのか」と聞かれた場合に、「名古屋」と答えるケースは多いと断言します。「名古屋市周辺の都市の多くは名古屋市のベッドタウンで、名古屋市に比べて規模が小さいため、聞き手に伝わらないと考えてしまうからです。また、『愛知県』と答えた場合、『愛知県のどこ?』と聞かれたら面倒だし、小さな都市だから名前を言うのが恥ずかしいといった気持ちもあるかもしれません」と江口さんは説明します。

今から約11年前、愛知県民が「名古屋から来た」と答える問題を、名古屋テレビが番組で取り上げたことがありました。バスツアーで長野県にやってきた愛知県民に「どこから来たんですか?」と尋ねてみたところ、全員が「名古屋」と回答しましたが、実際には、一宮市や春日井市、日進市などから来ており、名古屋市の人は一人もいませんでした。

つづき
https://www.yomiuri.co.jp/otekomachi/20260914-GYT8T00010/