中国の「日本叩き」が喧(かまびす)しい。福島第一原子力発電所のALPS処理水(トリチウム以外を取り除いた冷却水)を、8月24日午後1時から、太平洋に放水している問題だ。

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 たしかに、まだ記憶に新しい12年前、福島第一原子力発電所の事故を起こした東京電力という会社は、大問題である。東電がその責任を、半永久的に免れないことは、論をまたない。とはいえ、先週からの中国の反応は、日本から見ると、いささか過剰だ。経済産業省の資料によれば、中国の原発では、もっと濃度の高い処理水を、平然と海中に放出しているのだから。

 なぜ中国は、かくもヒステリックなのか? 縷々思い連ねるに、そこから浮かび上がってくるのは、「5つの理由」である。以下、詳細に見ていきたい。

【1】中国の「正義」をアピール
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 日本で今回の処置を決めたのは、いまの岸田文雄政権ではなく、前任の菅義偉政権である。2021年4月13日、菅首相が「海洋放出を2年程度の後に開始します」と宣言したことがきっかけだ。

 実は中国は、この日から一貫して反対してきた。同日の外交部定例会見では、「戦狼外交官」と呼ばれた趙立堅報道官(現在は左遷されて外交部国境海洋事務局副司長)が、早くも怒りをあらわにしている。

 「日本の福島の原発事故の核廃水処理問題は、国際的な海洋環境と食品の安全、人類の健康に関わることだ。国際的な権威ある機関や専門家は、福島原発のトリチウムを含む廃水を海洋に排出することは、周辺国の海洋環境と公衆の健康に影響を与えると、明確に指摘している!」

 この時点では、「ただ反対を唱えている状態」だった。かつ隣国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、中国以上に声高に、怒りの声を上げていた。

 それから2年あまり経って、日本では東京電力の「処理水保管タンク」の水量が98%を超え、岸田政権が8月後半に放出を始めると決めた。7月4日には、来日したIAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長が、岸田首相に対して、安全にお墨付きを与える「包括報告書」を手渡した。

 すると中国は、7月18日に李強首相が主催して、北京で全国生態環境保護大会を開いた。共産党のトップ7(党中央政治局常務委員)が全員出席する重要な大会と位置づけ、習近平主席が重要講話を述べた。

 「今後5年は、麗しい中国を建設するのに重要な時期だ。(習近平)新時代の中国の特色ある社会主義生態文明思想を、深く貫徹していくのだ。人民が中心であることを堅持し、『緑水と青山はまさに金山銀山』(2005年8月に当時の習近平浙江省党委書記が同省湖州を視察した際に唱えた言葉で、現在は習政権の生態保護のスローガン)の理念を固く樹立、実践していくのだ。

 麗しい中国の建設を、強国建設と民族復興の突出した位置に置き、都市と農村の住居環境の明瞭な改善を推進し、麗しい中国建設に明確な成果を作り出していくのだ。ハイレベルの生態環境をハイレベルの発展の支えとし、人と自然の和諧共生の現代化を、いち早く推進していくのだ……」

 こうして、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義生態文明思想」を、改めて採択。その中で「藍天・碧水・浄土」を、「三大保衛戦」として、強く推進していくと定めたのだった。

 「碧水」とは、中国の自然な碧(あお)い海洋や河川を保持していくということだ。そしてそこに、福島原発の処理水が中国の海域に流入してくるということが、引っ掛かってくるのだ。

 そのため、中国では連日、福島の処理水の問題を報じているが、「悪の日本」を報じる前に、必ず「正義の中国」をアピールしている。

つづく