この作成者(西潟課長補佐?)は書いた記憶があれば「私が書いた」と答えるはずだが、「大臣レクが行われたのではないか」と他人事のように答えている。これは不自然だ。自分が書いた文書を見たら、書いたかどうかは誰でも思い出す。これは国会や法廷で問い詰められたとき「私が書いたものではない」という逃げ道を残したのだろう。

 それを示すのが「上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば」という奇妙な条件文である。これは暗に議事録に上司(安藤局長?)が手を入れたことを示唆している。当時の総務省では、担当者の書いたメモを上司が原形をとどめないほど書き換えたことが何度もあったというのが経験者の見方である。

 この文書は大臣レクの記録なのに大臣室には配布せず、事務次官(自治省出身)にも配布していない。桜井総務審議官以下の郵政省系の事務方だけで共有され、正式の決裁も受けず、総務省の行政文書ファイル管理簿にも入っていなかった。

 以上から考えると、2月13日15:45から大臣レクが行われた形跡はない。礒崎補佐官への対応をめぐって、総務省が高市大臣に相談した形跡もない。松本総務相も「同席者の間でも内容についての認識が必ずしも一致していない」と明言を避けた。

高市氏と総務官僚のどちらかが嘘をついている
 このように高市氏と総務省の話は、大きく食い違っているので、どちらかが嘘をついている。高市氏が嘘をつく合理的理由はなく、大臣室の2人の答えも一貫しており、共謀して嘘をついているとは思えない。

 では総務省が嘘をつく可能性はあるだろうか。マスコミでは「官僚が議事録に嘘を書く理由がない」というが、本件ではあるのだ。

 2月13日の会議は、その4日後に予定されていた礒崎補佐官レクを前にした作戦会議だったのではないか。礒崎氏からは「本件を総理に説明し、国会で質問するかどうかについて総務相の指示を仰ぎたい」という宿題が出されていた。それについて情報流通行政局長以下が(大臣抜きで)協議した可能性がある。

 ここに大臣コメントとして出ている話は、局長以下のスタッフの話の主語を変えただけなのではないか。17日には、安藤局長が礒崎補佐官に「極端な事例をあげるのは(答弁として)苦しいのではないか」という高市総務相のコメントを伝え、礒崎氏を抑え込んだ。このとき礒崎氏を説得するために、この議事録を使った可能性がある。

 総務省の事務方は、なぜ大臣に礒崎氏の件を相談しなかったのだろうか。当時は「安倍一強」といわれるほど首相官邸の力が強かった。高市氏は礒崎氏と同じく安倍側近であり、マスコミに対しても強硬派だった。2人の意見が特定の番組を名指しで批判すべきだということで一致すると「民放相手に徹底抗戦」になってしまう。

 そのため安藤局長は、高市氏には知らせないで「1つの番組を名指しするのは答弁として苦しい」という慎重派の意見を大臣コメントとして礒崎氏に伝えたのではないか。これは大臣抜きで事務方が官邸と取引して政策を決めるクーデターのようなものだ。

 高市氏も「総務省の中で私は浮いていた」と語っており、こういうことが常態化していた可能性がある。2014年にフジテレビホールディングスの外資規制違反が判明したときも、これを厳重注意処分にとどめたのは安藤局長で、高市大臣は知らされていなかった。

 総務省の歯切れが悪いのは、西潟氏が「あれは大臣レクではなく、局内の作戦会議だった」と答えたからではないか。大臣コメントは彼が書いたものではなく、上司(安藤局長?)が「関与」して書き加えたとすれば、上司は虚偽公文書作成罪に問われる(総務省は告発義務を負う)。

 さらに重大なのは、このような部外秘文書を小西議員が政治利用したことだ。彼はその文書を「総務省職員」から昨年の参議院選挙前に入手したというが、これが事実だとすると、その職員は国家公務員法100条(守秘義務)に違反する。それを入手して公開した小西氏も、国家公務員法111条違反(そそのかし)に問われるおそれがある。

 5月のG7(先進7カ国首脳会議)では経済安全保障がテーマとなり、各国の情報セキュリティを強化する対策が協議される。情報通信を所管する総務省の情報セキュリティがこのようにずさんでは、各国の信頼を得られない。総務省は当事者を国会に呼んで真相を解明し、秘密漏洩や公文書偽造については刑事告発を含めて厳正に対処すべきだ。

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74403