> 男はもうすぐ処刑される予定だったし牢の鍵はかけられていたから、牢番たちは最初だけ立ち会った後は牢番の待機所にいた。
牢獄へ続く通路は行き止まりで、待機所の前を通らなければ外に出られないのだから逃げられる心配はない。兵士もいる。牢獄の外は巡回の兵士もいる。

なのに昨日、いつもの女性が面会に行ったきり一時間を過ぎても戻らなかったので見に行くと、二人は消えていた。牢の鍵はかけられたままだったが窓の鉄格子が全部切られていた。
大騒ぎになって城門は閉じられ、総出で城の敷地内を探したが二人は見つからなかった。その後は第二騎士団や警備隊員で王都全域まで範囲を広げて大規模な捜索がなされたが、いまだに脱獄犯も赤毛の女も見つかっていない。

団長さんの顔には疲労が滲んでいる。
「本当にお疲れさまでした。それで脱走した男は?」
「上手くどこかに潜り込んだようだ。兄妹の家も見てみたが、妹は『誰も知り合いがいない場所の修道院に入って天に召される兄の為に祈る』という書き置きを残して家を出ていた」
「そうだったんですか」

「脱走犯はいずれ捕まるだろうと言うのが大方の予想だ。脱走の情報は早馬で王都の全ての外門に送られるからね。脱獄してから急いで王都の外門に向かっても、まず間に合わないんだ」
「そうなんですか」
「王都で隠れるなら貧民地区に潜り込むのが常だけど、男は素人だから懸賞金目当ての密告でいずれ捕まるだろう。妹さんのことを思うと俺も気の毒とは思うが……仕方ない」
「そうですね」

心の中で団長さんを含め必死に捜索していたであろう真っ当な人たちに頭を下げた。
許してくれとは言わない。私はいつかこの身にバチが当たると思っている。